the Craftsmanship of MASUYA
満寿屋の“地産地消”
「十勝にはこんなにも小麦畑が広がっているのに、どうして外国産の小麦を使わなくてはいけないんだ?」2代目社長がそう考えたのはもう20年以上も前。そこから満寿屋の地産地消への長い長い取り組みが始まります。“地産地消”とは文字通り“地元で生産したものを地元で消費する”という意味です。簡単そうに見えますが、食料自給率が40%しかない日本では実はとても難しいことなのです。満寿屋がある北海道・十勝は、小麦生産量が日本一! 国内全体の4分の1を誇る大産地です。しかし生産される小麦はほとんどがうどん用。パン用の小麦は1%もありません。
それも本州などに卸されてしまい、地元でパンとなり地元のお客様のもとに届くことはほとんどありませんでした。代わってパン用に多く使われた小麦は海外から輸入したもの(外国産小麦)。消費者はもちろん生産した農家さんすらも「自分たちがどれだけ美味しいものを生産しているのかわからない」という状況が続きました。そんな状況を打破するために、また『創業当初から食材は地元産にこだわってきたのに、主になる小麦は地元産を使わないでどうする!』という強い思いから、2代目社長は地元農家さんや製粉業者の協力を得ながら地元産小麦の普及に奔走しました。
「まずは国産・道産小麦の普及から」、1990年全国に先駆けて道産小麦100%使用パンの製造・販売を2号店 ボヌールマスヤ で開始しました。しかし小麦生産が安定せず、その割合はまだ10%程を推移するに留まります。
「それなら他の食材の地元産へのこだわりをもっともっとアピールしよう!」もともと十勝は農作物の宝庫、特に豆類や乳製品は全国トップクラスの美味しさと品質を誇ります。
美味しくて安全なものを提供してくれる農家さんはこんなにも身近にいる、お客様に更なるアピールをしました。あんこを作るための小豆や砂糖、クリームを作るための牛乳や卵、調理パンに使う食材など今まで以上に徹底的に地元産にこだわり手作りしました。そうしているうちに様々な農家さんとの交流の輪が広がりました。
そして2006年、いよいよ国産小麦の使用が半数を超える時が訪れます。秋まき小麦“キタノカオリ”の登場です。寒冷地向けに開発されたこの新品種は、まさに十勝の気候と相性抜群。また、他品種とのブレンド利用にも優れているため用途も広がりました。
2009年、全商品に十勝産小麦100%を使用した6号店 麦音 が開店。2代目から現社長までに受け継がれた夢の実現です。「地元の農産物をパンの材料などにして普及させたい。でも、そもそも地元の農産物が美味しくなければ普及していくことはない。美味しい農産物を作るためには、何より農産物が健康に育つための良い環境がなければ…」という4代目社長・杉山雅則の言葉通り、麦音は小麦や食材の他にも、 地元木材の間伐材や廃材などを再利用した“木質ペレット”を燃料とする石窯やストーブの設置など、環境面からの地産地消・十勝のパン屋としてできることにも積極的に取り組んでいます。
十勝で採れたものを十勝の職人が手作りし十勝に住んでいる人達に食べてもらう。沢山の恵みを与えてくれる十勝…自分達の住んでいる土地の本当の魅力を知ってもらうことが、
一緒に歩んできてくれた農家さん達への恩返しでもあり、この土地への恩返しでもあると満寿屋は考えます。
それが満寿屋の“地産地消”です。
地産地消の仕事人
農林水産省 平成23年度「地産地消の仕事人」に社長・杉山雅則が認定、受賞されました。地産地消への取り組みの推進に貢献した人材に贈られるもので、満寿屋の「地産地消・食育」そして「消費者との交流」が認められ、今回の受賞となりました。
満寿屋の“取り組み”
『美味しいものを美味しく食べてもらいたい』その思いから満寿屋ではさまざまな取り組みを行っています。
食育活動
手作りの石窯を積んだ軽トラック「石窯号」はその象徴です。幼稚園や小学校、町のイベントなどで焼きたてのパンやピザを食べてもらいます。ご要望があれば出張パン教室も開きます。「普段何気なく食べているものがどのように作られるかを知ることができれば、美味しいものはさらに美味しくなる」それをより沢山の人に伝えるために、石窯号は今日も十勝中を走り回ります。
地域とのつながり
地域とのつながりは幅広く。農家さんはもちろん、地元高校や温泉街などとのコラボレーションにも積極的です。たとえば麦音の小麦は農業高校の生徒さんと一緒に育てています。商品の開発などで新しいアイデアをもらうこともあります。幅広い世代との交流は、地域とのつながりをより強くしてくれます。
環境への配慮
石窯号や店の石窯などの燃料には“木質ペレット”を使用しています。木質ペレットとは森林の間伐材や廃材を粉砕圧縮し有効活用した環境に優しい燃料です。その他にもエコバックの推進やパンを乗せるトレー用の紙の削減など、ちょっとした所からでも環境への配慮を怠りません。
イベント活動
満寿屋では独自のイベントを開催しています。麦音の小麦畑での種まき・収穫・馬耕(帯広ばんえい競馬のばんばに耕してもらいます)や、父の日のピザ作りや子ども向けパン教室、パン教室を使った交流会…。“食育”という観点もありますが、まずは地域の人達に楽しんでもらいたい、少しでも地域活性に繋がればと願っています。